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6受験対策として辰已講座の利用方法とその成果倒産法については、選択科目集中答練でお世話になりました。倒産法に限った話ではないと思いますが、選択科目は司法試験を模した練習用の問題の流通量が少なく、どうしても問題演習は司法試験過去問に頼らざるを得ない傾向があります。しかし、司法試験過去問のみでは、「もう出た」判例や論点しか練習ができませんし、網羅性の点でも不安が残ります。そこで、辰已の答練を受講させていただきました。受講して臨んだ2度目の司法試験での私の倒産法の素点は、受講することなく臨んだ1度目から20点近く上がりました。選択科目集中答練は、実に8年分(第1問と第2問合計で16問)という物量で、その不安をカバーしてくれます。「まだ出ていないがこれから出てもおかしくない」判例や論点を上手く拾い、かつ本番試験に近い雰囲気の作問となっています。解説も丁寧に作りこまれており、復習も安心して行えます。正直なところ、選択科目だけのために16問もの答練をこなすことはそれなりに負担が大きく、最初は「受講しないほうがよかったかな」と思ったこともありました。しかし司法試験本番の試験中、過去問未出、集中答練既出の論点に出会った時、「受講してよかった」と心から思いました。その論点は、過去問では一度も出たことがないのに集中答練では3度も出題されており、そのおかげで本番までに自分で書けるようになった、思い出の論点でした。7自己の反省を踏まえ、これから受験する人へのアドバイス(1)選択科目初学者へのアドバイスこの体験記では、私が選択した倒産法について主に書かせていただきました。ただ、選択科目は頭の使い方や学習法の点で科目ごとの違いがかなりあります。まず、ご自身が嫌いにならずに勉強できる科目を見つけていただくことが大事だと思います。倒産法は民法や民事訴訟法の難しさと同種の難しさを随所で感じる科目ですから、これらの科目が嫌いだという方は避けたほうが良いかもしれません。ただ、倒産法と向き合っているうちに民法や民事訴訟法の力がつくという向きもあるので、あえて倒産法を選ぶというのもありかもしれません。倒産法を選んだら、上にも述べたとおり、まずは薄めの本(「倒産処理法入門」や「民事再生法入門」もいいですし、有斐閣ストゥディアの「倒産法」もいいと思います)を1周(できれば2周)通読するのが良いと思います。枝葉の知識をくっつけるための幹として、全体像の把握をするためです。幹がで'22年司法試験合格体験記きたら、次は早速司法試験過去問に進んで良いと思います。民法や刑法といった必修科目では、入門書と司法試験過去問との間に分厚めの基本書や予備校の基礎講座、演習テキスト等が必要になるかと思いますが、選択科目ではいきなり過去問でよいように思います。わからなかった論点は全て入門書なり「1冊だけで」のようなまとめ本に書き込んでいき、インプットとアウトプット練習を同時にやってしまうのが効率的です。司法試験過去問を全てつぶし、さらに答練を受講した暁には、直前見直し用のまとめノートが出来上がっているはずです。(2)予備試験受験生へのアドバイス私は法科大学院ルート出身なので最近の選択科目付きの予備試験の様子はわかりませんが、基本的には、司法試験へ向けた学習をより早く始めるということでよいと思います。難しい基本書や体系書に飛びついたりせず、その時間で薄い入門書を2周するような学習法が効率的だと思われます。予備試験の選択科目は過去問の集積が足りませんし、予備試験から司法試験までの時間は他の科目の傾向変化への対応になるべく使いたいことかと思いますので、問題演習は早い段階から司法試験過去問を惜しみなく使ってしまって良いと思います。司法試験過去問は結構な数になるので、早めに始めたから早々に消費してしまって後悔する、というようなことにはなりません。(3)来年受験する方へのアドバイスこれは司法試験全般についての持論なのですが、司法試験対策上いちばん大切なマインドは、「司法試験が結局は相対評価の試験であること」を十分に認識することだと思います。問題は難しく、出題趣旨は不可能を強いてきます。真に受けて1000ページ超えの体系書や学術論文に手を出し始めると、むしろ合格からは遠ざかります。「試験委員が考えた模範解答」と正面から勝負しようとせず、「受験生の多数が書ける論述」がどのあたりまでなのかを把握し、それをなるべく全て書けるようになることを目指すのが正しいと思います。直前期は不安になると思いますが、それは皆同じですし、仮に本番にびっくりするような問題が出たとしたら、皆揃ってびっくりしています。気を強く持って、深呼吸して落ち着いて、試験に取り組んで下さい。応援しております。※この原稿は2022年10月30日までに寄稿いただいたものです。